漏電火災におびえながら右往左往した二週間だった。人に依頼して解決するかと思ったが、そんな甘くなかった。ほぼ自力で対処せざるを得ない漏電。次はあなたの身に降りかかるかもしれない。
事件
2019-02-02、突如、家の電気がすべてストップした。停電かと思いブレーカをみるも上がらず。消費電力も契約範囲内のはず。わからないことだらけの中、あれこれ調べ回って約二週間後に原因を突き止めた。漏電だった。冷蔵庫が経年劣化により漏電して漏電ブレーカが落ちていたのが原因である。買い替えにより解決した。30年近くお疲れ様でした。
問題
電気が使えない。正確にいうと数時間おきに不定期でブレーカが落ちる。突然、なんの前触れもなく落ちるので怖い。なにより冷蔵庫や暖房が使えない。うちは北海道であり、しかも真冬のタイミング。うちの暖房は電気で動いているため死活問題。そして観測史上最強の寒波が到来……。
状況
分電盤にある漏電ブレーカ(漏電遮断器)が数時間おきに不定期で落ちる。
このことから停電ではなく漏電であるとわかる。停電ならアンペアブレーカが落ちるはず。また、常時漏電ではなく瞬間漏電であるとわかる。常時漏電なら不定期でなくすぐに落ちる。というより、そもそもブレーカが上がらないはず。
(なお、このような知識は最初のころまったくなかったため問題の切り分けもできずパニクっていた)
対処
- 漏電している箇所を特定する
- 修理や交換をする
実際にやったこと
- 状況確認とその記録
- 調査
- 電気屋に来てもらい分電盤の正常確認
- 漏電箇所の特定
1. 状況確認とその記録
とりあえず時系列順に、何が起こり、何をしたかを記録した。
たとえば漏電ブレーカが落ちた日時とかんたんな状況を逐一記録した。外部に助けを求めるにしても自分が理解できていないし、状況の説明もできないので。記録した状況とは、使用していた分岐ブレーカや使用していた家電のことである。漏電箇所を絞るためには記録しながら試さないと、とても覚えていられない。
例は以下。実際のメモは長くて整理されていないので省略。
2019-02-02 00:00 漏電ブレーカ落ちた 2019-02-02 01:00 電気屋に電話した 2019-02-02 02:00 家電(ラジオ)のコンセントを抜いた 2019-02-02 03:00 漏電ブレーカ落ちた 2019-02-02 04:00 家電(モデム)のコンセントを抜いた 2019-02-02 05:00 漏電ブレーカ落ちた
2. 調査
問題の状況に関連する物事について調べた。(実際は漏電チェックと同時進行だった)
- 漏電について
- 分電盤について
- 家電とコンセントを網羅する
- コンセントと分岐ブレーカの対応関係
1. 漏電について
- 漏電とは何か
- 漏電の原因になりうるもの
- 漏電しうる箇所
1-1. 漏電とは何か
漏電とは、電気が電気回路以外に漏れ流れることである。電線や電気機械の絶縁ができていないと起こる。
漏電は火災の原因になる。
- スパーク(火花)
- 抵抗加熱
- 誘導加熱
たとえばスパークは漏電によって火花が散り、可燃性物質に引火することで火事が起きる。
対処は以下。
- 家電をアースにつなぐ
- コンセント周りのホコリをとる
- 電線は折り曲げず重ねない(重ねるなら90度以下の角度で巻く)
- 家電を水気のあるところに置かない(水回りは換気して湿気をとる等)
通常、漏電は漏電ブレーカ(漏電遮断器)によって未然に防がれる。しかし漏電ブレーカが壊れたらどうなることやら……。
1-2. 漏電の原因になりうるもの
- 絶縁体
- 経年劣化(耐用年数: 15〜20年)
- 獣害(ネズミにかじられる等)
- 水気
- 水回り
- コンセントやACアダプタに水気がつく
- 外にあるコンセントに雪が風で飛んで付着する
- 外にあるコンセントに雪が溶けてできた水蒸気があたる
- 洗面所・台所・トイレなどの水場で水や水蒸気が付着する
- サビ
- 外にある照明器具が錆びて漏電することもある
- コンセントやACアダプタに水気がつく
- 水回り
水回りやサビの話は電気屋のおじさんから聞いた。確率的に水回りで漏電していることが多いらしい。
1-3. 漏電しうる箇所
今回の漏電ブレーカが落ちる原因について考えてみたところ以下のような箇所が候補に挙がった。
- じつは漏電していない場合
- 分電盤の故障
- 漏電している場合
- 外のコンセントや照明器具
- 屋内配線の劣化
- 延長コードや家電の劣化
漏電の原因によって対処が変わる。家電なら買い替え、屋内配線なら家の壁に穴を開けて配線の状態を確認するなどの大工事になるかもしれない。
今回は電気屋に来てもらい分電盤は正常であることはわかった。漏電ブレーカが未だ落ちることから、どこかしらで漏電が起きていることは間違いない。ただし電気屋がいるときに漏電が起きなかったことから、漏電箇所の特定は自分でせねばならない。これが大変だった。
1-4. 漏電するタイミングにおける漏電の種類
種類 | 概要 |
---|---|
常時漏電 | 常に漏電が生じる。漏電箇所の特定が容易 |
瞬間漏電 | 不定期に一瞬だけ漏電が生じる。漏電箇所の特定が難しい |
漏電箇所を特定するとき、漏電が生じるタイミングによって特定の難易度やかかる時間が変わってくる。常時漏電ならすぐに分電盤が反応してくれるため明確にわかるし、時間もかからずに済む。しかし瞬間漏電で不定期だと、いつ漏電するかわからないため時間がかかるし、箇所の特定が不確かになる。
2. 分電盤について
分電盤と各種ブレーカの名称や役割について調べた。名称については調べるところによって違った。紛らわしいのでここでは統一したい。
- 分電盤
- アンペアブレーカ
- 漏電ブレーカ
- 分岐ブレーカ
2-3-1. 分電盤
ブレーカがある装置全体を「分電盤」と呼ぶらしい。
┌───────────────────┐ │┌┐ ┌┐ ┌┐┌┐┌┐┌┐│ │││ ││ │││││││││ │└┘ └┘ └┘└┘└┘└┘│ │ ○ ● │ │ ┌┐┌┐┌┐┌┐│ │ │││││││││ │ └┘└┘└┘└┘│ └───────────────────┘ ↑ ↑ ↑ アンペア 漏電 分岐 ブレーカ ブレーカ ブレーカ
ブレーカ | 概要 |
---|---|
アンペアブレーカ | 停電や契約アンペア数を超えた電力を使用したときに落ちる |
漏電ブレーカ | 漏電が発生したら全体の電源を落として火災を未然に防ぐ |
分岐ブレーカ | 箇所ごとに通電するかしないかを設定できる |
今までは「アンペアブレーカ」を上げるだけで解決していた。ところが今回は「漏電ブレーカ」が落ちたので解決が難しくなった。そもそも私は今まで「アンペアブレーカ」しか知らなかった。
2-3-2. アンペアブレーカ
以下の場合に落ちて電気が使えなくなる。
- 停電
- 発電所〜電信柱の電線〜自宅までの間で電気が来なくなった
- 契約超過
- 契約アンペア数を超えて電気を使用した(電子レンジ、ドライヤーなどアンペア数が多いものが原因になりやすい)
ふつう電気が使えなくなったらこのアンペアブレーカを上げれば解決する。だが、今回はこれに当てはまらない。
2-3-3. 漏電ブレーカ(漏電遮断器)
漏電ブレーカの下には二つのスイッチがついていた。
┌───┐ │┌┐ │ │││ │ │└┘ │ │○ ●│ └───┘ ↑ ↑ ON用 テスト用
まず一般的なスイッチはその動作によって以下の二種類に分けられる。
スイッチ方式 | 説明 |
---|---|
モーメンタリ | 押しているときだけONになる |
オルタネイト | 離してもONのまま |
漏電ブレーカの下にあるスイッチの概要は以下。
スイッチ | 色 | 方式 | 役割 |
---|---|---|---|
○ |
白 | オルタネイト | ONにしないと漏電ブレーカを上げることができない(漏電ブレーカが落ちるとOFFになる) |
● |
赤 | モーメンタリ | テスト用ボタン(押すと漏電ブレーカが作動して落ちる。もし落ちないなら故障) |
漏電ブレーカを上げるときは、まず白いスイッチをONにしてから上げる必要がある。白いスイッチがOFFのままだと漏電ブレーカを上げても上で止まらずそのまま下がってくる。
漏電ブレーカを落としたいときは赤いスイッチを押せばいい。
2-3-4. 分岐ブレーカ
分岐ブレーカはそれぞれ家のコンセントと対応している。ONにした部分だけ通電する。漏電箇所を特定するときに使える。
1 2 3 4 入 入 入 切 ┌┐┌─┐┌┐┌┐ │││●│││││ └┘└─┘└┘└┘ 5 6 7 8 切 入 入 入 ┌┐┌─┐┌┐┌┐ │││●│││││ └┘└─┘└┘└┘
うちの分岐ブレーカは8つあった。このうち2つは以前から使っておらず「切」の状態だった。他6つは使用しており「入」の状態だった。
分岐ブレーカのうち2つに、赤いスイッチ●
がついたものがあった。これは単独で漏電ブレーカの役割を持ったものらしい。赤いスイッチを押せば、その分岐ブレーカのみが落ちる。漏電ブレーカは上がったままだし、他の分岐ブレーカも上がったままなので、他の部分は継続して電気を使用できるしくみ。
ちなみに赤いスイッチを押すとその分岐ブレーカが落ちてOFF(切)になる。
スイッチの状態については以下のように表記する。いくつかの表記ゆれがある。
日本語 | 和 | 英 |
---|---|---|
上げる | 入 | ON |
落ちる、落とす | 切 | OFF |
ちなみにうちの分岐ブレーカ付近には以下のようなシールが貼られていた。
漏電ブレーカが切れた場合の取扱い方法 1.分岐ブレーカを全部「切」にし、漏電ブレーカを「入」にしてください。 2.分岐ブレーカを順に「入」にし、漏電ブレーカが再び切れた時、その分岐ブレーカの回路が漏電しています。 3.漏電している回路の分岐ブレーカだけを「切」にしてお使いください。 4.電気工事店へ点検を依頼してください。
もし常時漏電している場合、その箇所に該当する分岐ブレーカは上がらない。あげようとしても上で止まらずすぐに下がってくる。これについてはどこにも書いていなかった。
この挙動については今回、冷蔵庫が瞬間漏電から常時漏電に途中で悪化したことで色々と分電盤をいじって確認した。もっとも、当時は冷蔵庫の悪化という状況も未知であったため混乱したが。冷蔵庫をほかの分岐ブレーカに対応するコンセントに挿して分電盤の挙動を確認することで状況を把握した。
2-4. 家電とコンセントを網羅する
- 家にあるコンセントすべてを見て回る
- 場所とその家電名をリストアップする
漏電箇所を特定するために一つずつ家電からコンセントを抜いていくことになる。まずはコンセントの場所をすべて把握すべし。メモ必須。
家電のコンセントをひとつずつ抜いて漏電が発生しないか確認していく。優先順位をつけるといい。たとえば冷蔵庫の中身など対処が必要な家電のチェックは後回しにするなど。
2-5. コンセントと分岐ブレーカの対応関係
すべてを把握する必要はなかった。必要に応じておおよそざっくりで確かめた。
3. 電気屋に来てもらい分電盤の正常確認
- 電力会社に「漏電ブレーカが落ちた」ことを説明した
- すでに漏電ブレーカを上げたあとでは確認できないと言われた
- 漏電箇所の特定方法について聞く
- 別の日、「漏電箇所のひとつを特定してその分岐ブレーカを落としたが未だ漏電ブレーカが落ちる」ことを説明した
- 電気屋に来てもらい分電盤に問題ないことは確認してもらった
- このとき漏電は発生しなかったので漏電箇所は特定できず
- 漏電箇所の候補として水回りの確率が高いことを聞く
解決せず。以後、自分で漏電箇所の特定をすることになる。
4. 漏電箇所の特定
以下のような方法で漏電箇所の特定をする。
- 外
- 外の照明: 対処不能のため放置
- 外のコンセント: ガムテーム等で雪がかからぬようにする(漏電防止)
- 内
- 家電: ひとつずつコンセントを抜いて漏電している家電がないか確認する
- 屋内配線: 分岐ブレーカひとつずつ上げて一定時間待ち、漏電していないか確認する(特定後は電気屋に工事を依頼?)
上から順に、生活に支障が出にくい順にやった。
4-1. 家電の漏電チェック
以下のように色々と厳しい状況になった。休憩&準備期間を入れながらやるべき。(もっとも今回は冷蔵庫をテストする準備期間の前の休憩期間中に常時漏電へと悪化してパニクり休みなくテストせざるを得なくなったが……)
- 冷蔵庫は中身が悪くなるため事前に対処が必要
- 消費する(多すぎて無理)
- 外に出す(真冬なので当分は持つはず)
- 暖房は切ったら凍死するかも
- 必要なら灯油ストーブなどで寒さを凌ぐ
- このタイミングで観測史上初の最強寒波が到来……暖房はつけたままやりすごそう
- 疲労困憊
- 漏電の件で調べたり対処したりを一週間ぶっ続け
- 漏電箇所の特定により家電が使えず人力対処(洗濯、料理、掃除など)
- 大雪が来て除雪が大変
- ネットが使えないので調べ物ができない
4-2. 瞬間漏電する家電の特定方法
瞬間漏電はいつ漏電するかわからない。今回、私が記録したところによると最短で1.5時間。最長で32.5〜40時間。だいたい6時間以内に1回は落ちていた。(最長のは深夜に寝ていた頃に発生したため細かい時間の特定ができなかった)
漏電の原因はとりあえず家電として、具体的な特定方法を考えてみる。
- 漏電は深夜にも起こったことから、深夜に使わなかった家電のチェックはしなくてよさそう
- 深夜にも使っていた常時コンセントを挿している家電についてのみ漏電チェックすることとする
- 常時使用する家電のコンセントをひとつずつ抜いていき、40時間経過しても漏電しなければ直前に抜いた家電が漏電原因だと特定できると仮定する
問題はいつまで漏電しなかったら漏電していないと言えるか。瞬間漏電は不定期に漏電するため明確な値が出せない。とりあえず記録から40時間以内に漏電が発生しているため、これを指標にする。余裕を持たせて48時間を目安とする
- 常時使用する家電をリストアップする
- 生活に支障がないもの順に並べる
- 家電のコンセントをひとつずつ抜いていく
- 漏電ブレーカが落ちたら次の家電コンセントを抜く
- 48時間経過しても漏電ブレーカが落ちなければ、直前に抜いた家電が漏電原因であると予想される
4-3. 瞬間漏電する屋内配線の特定方法
仮に屋内配線で漏電していたとしたら電気屋に工事を依頼することになる。自分では対処できない。それでも特定したほうが話が早いだろうから自分でできる範囲でやる。
- 家電コンセントはすべて抜く(または家電一台ずつチェックして48時間漏電がなければその家電は使う)
- 分岐ブレーカをひとつだけ上げる
- 48時間経過しても漏電ブレーカが落ちなければ、その分岐ブレーカに対応する屋内配線は問題なし(漏電していない)
- すべての分岐ブレーカに対して行う
今回
もう少し複雑な状況だった。冷蔵庫のテスト直前で瞬間漏電から常時漏電に悪化した。このときの分電盤の挙動が今までと違って混乱。分電盤の挙動について確認を行い、同時に漏電の状況確認も行うことになった。
分電盤の細かい挙動まで知らなかった。漏電箇所の特定方法がこれで正解なのかもよくわからない中でやっていた。その辺の情報をこの記事で書き残しておく。
所感
「漏電火災になったらどうしよう」という不安で寝れなかった。バンバン漏電ブレーカが落ちるので、そのうちいつか漏電ブレーカが壊れるかもしれない。漏電しているのが確実である以上、漏電ブレーカが壊れたら漏電火災することを意味するのでは? 最後の砦たる漏電ブレーカ頼みの状況がじつに心もとなかった。
かといって電気を止めたらストーブが止まり凍死する。漏電は不定期だから深夜寝た頃に気づかず起こることもよくあった。寝ているうちに凍死か漏電火災で焼死するかもしれない。タイミングの悪いことに真冬な上、観測史上最強の寒波が来たのだから。凍死と焼死の恐怖を抱えながら安眠できるほど図太くない。でも寝て回復しないと解決すべく行動できないジレンマ。
恐怖ゆえに色々と考えてしまい眠れなくなって自律神経がやられて体温低下。メモで実績を記録し、それをみて「解決に向かっているはずだ」と信じ込ませた惨めな日々は忘れない。
未知の事態に対処方法もわからず苦労した。夜中や早朝から対処に追われる。これが一週間以上続き疲弊。
急に「バチン」と音がして落ちるので怖い。しかも不定期。しかも全家電が一斉に使えなくなる。しかも真冬でストーブも止まる。炊飯器なども途中で止まる。恐怖の中、人力対応で疲弊する。日常が壊れる恐怖。電気に依存しきった無知蒙昧な私になすすべはなかった。きつかった。
もう漏電はこりごり。
2018年10月には北海道全域停電「ブラックアウト」が起きた。このことから道民としては、もはや電気の安定供給など信用できない。むしろ電気を利用することで温暖化や異常気象が加速し、発電所や送電線に問題が生じて停電になるのかもしれない。悪循環。今こそ人類は電気依存から脱するべきなのだ。
ああ、電気がなければ生きられないこんな私ではブラックアウト時代を生き残れない。まずい。そうだ、森の精になろう。縄文人的な生活をせねば活路はないんだ。そうに決まってる。レッツゴー樹海。イエス・フォレスト、ノー・エレキ。……無理だわ。
ラズパイ・クラッシュ祭り
漏電事件の裏で、人知れずもうひとつの事件が起きていた。それは「ラズパイ・クラッシュ祭り」である。
この漏電前にラズパイのシステムがクラッシュした。OS再インストールしようとして二台目ラズパイを使っている最中に、漏電ブレーカが落ちて二台目もクラッシュした。……………………。クラッシュ祭りだぜヒャッハー!!! たーのすぃぃぃぃいいい!!! でゅへへへへへぇぇぇぇぇぇぇぇぇぁぁあああ!!!
も う や だ
た す け て